次世代の新エネルギー 「バイオマス発電」

川崎バイオマス発電。 13階まで昇りました。
川崎バイオマス発電。 13階まで昇りました。
 8月18日、神奈川ネットワーク運動の「脱原発!地域エネルギー政策PJ」で、国内初の“都市型バイオマス発電所”を見学して来ました。

 川崎市の臨海部(川崎区扇町)に今年2月から営業開始した「川崎バイオマス発電所」は、木質チップを燃焼させて生じる熱エネルギーで発電しています。発電出力が33,000kW と、100%バイオマス利用発電所としては国内最大規模。38,000世帯が1年間に使用する電気量に相当します。木質チップ燃料の計画使用量は年間18万トン。建設廃材等を利活用したバイオマス発電を行うことで、年間12万トンのCO2を削減できるとのこと。
 住友共同電力㈱・住友林業㈱・フルハシEPO㈱が出資する川崎バイオマス発電㈱は、カーボンニュートラルという概念による「CO2フリー電気」を謳っています。電力の供給先としては、主にPPSへ売電しているとのことでした。

 13階まで昇ると、水蒸気の熱風と涼しい海風が交互に吹いてきました。眼下には工場群が広がり、臨海部の工業地帯に居ることを実感できました。隣接地には川崎天然ガス発電㈱の「天然ガス発電所」があり、京浜運河を挟んだ対岸には、JX日鉱日石エネルギー㈱の風力発電(2000kW級)の風車と、東京電力の「扇島太陽光発電所」も見え、ここはクリーンエネルギーの宝庫!

 操業の騒音で説明が聞き取りにくかったのですが、煙突について聞いてみました。川崎市の厳しい環境基準をクリアするため、排煙脱硫装置(硫黄酸化物SOxを無害化し、排出量を3ppm以下まで削減)、排煙脱硝装置(窒素酸化物NOxを無害化し、排出量を30ppm以下まで削減)を備えており、発電所の煙突から出ている白いものは煙ではなく湯気と同じ水蒸気とのこと。これが“都市型”の所以ですね。

 また、焼却灰についての多数の質問に、家庭ゴミより少ないものの塩分が残るので需要の多いセメント用として塩分を除去する「灰水洗」の設備があるなど、丁寧に説明していただく。

 1階に降り、隣接する連携企業ジャパンバイオエナジー㈱へ移動しました。住宅の解体時に発生する柱や梁、使用済みのパレット、剪定された樹木等、地元神奈川県や東京都の西部から持ち込また木質廃材を、分別、破砕してチップ化します。従来は産業廃棄物として処理されていた建築廃材等を燃料とすることで、資源リサイクルに貢献しています。そして5cm以下に破砕されたチップは、川崎バイオマス発電所の建屋に直接コンベアで運ばれます。遠方の発電所まで運搬すれば発生するCO2が、ここではゼロ!の優等生。

 チップヤードに入るとお味噌の匂いがすると思ったら、味の素川崎工場の製造工程で出る大豆の残渣も燃料に活用しているとのことでした。地元の連携がまた素晴らしいですね。

 単独でポンと発電所を作るのではなく、都市部という立地を生かし、企業間同士で連携することで、環境に配慮した優れた総力が発揮できていると感じました。新エネルギーの分野は事業としても活気を帯びていることを肌で感じることができ、学ぶことも多くあり、企画した甲斐がありました。

(高津Weネット・加藤伸子)

★バイオマスとは?
生物資源(bio)の量(mass)を表す言葉であり、「再生可能な、生物由来の有機性資源(化石燃料は除く)」のことを呼びます。バイオマスの種類としては、木材、海草、生ゴミ、紙、動物の死骸・糞尿、プランクトン、菌類など。

★CO2フリー電気とは?
CO2を排出せずに発電された電気のこと。代表的なものとして、再生可能エネルギーを利用した発電(太陽光、風力、水力発電など)が挙げられます。

★カーボンニュートラルの概念とは?
木質燃料を燃焼させて二酸化炭素CO2を排出するバイオマス発電の電気がなぜ「CO2フリー電気」と言えるのか、それはカーボンニュートラルという概念によります。
建設廃材、間伐材、樹木の剪定枝から作られた木質チップ、これらは樹木のときに光合成により大気中のCO2を吸収して酸素を生産していました。木質チップを燃やすとCO2が排出されますが、もともと吸収していたCO2が大気中に戻るだけなので、大気中のCO2濃度に影響を与える(CO2が増加する)ものではないという考え方です。

★PPSとは?
特定規模電気事業者(PPS:Power Produceres and Suppliers)。
日本における電力小売供給事業の新規参入者であり,自由化対象となる特定需要(2005年4月より,原則として契約需要50 kW以上の需要)に対して電気の供給を行う事業を営むことについて届け出をした者をいいます。
川崎市は、PPS事業者:イーレックス㈱と契約したことでコスト削減しました。